12.15.2013

かわいらしい
「組継ぎ本」の豆本


日本語デザイン研究会のメンバーで豆本作家のhokoriさんが、とてもかわいらしい組継ぎ本の豆本の試作をされました。

製本の作家さんの作品だけあって、しっかりとしたカバーがついたものを作ってくださいました。ソフトカバーでも通常の被せる形のものと、カバーの紙を長く取り本体に巻きつける形でケースにしたものがありとてもユニークです。加えて、ハードカバーを纏うものも作ってくださいました。組継ぎ本のハードカバーは初めての試みではないでしょうか。ご本人は「糸も糊も使わない製本というのが売りの組継ぎ本ですので、糊を使ったハードカバーはどうなのかなぁ」とおっしゃっていましたが、一つの形態として有用だと思います。

説明が後になりましたが、組継ぎ本とはラインラボの前田年昭さんが考案した本文を印刷した紙だけで製本ができる製本方式。小部数であれば手軽に作ることができる、真っ平らに開くことができる等のメリットがあります。
また、『文字の食卓』(本の雑誌社刊)で注目の正木香子さんによるエッセイ『花火の文字』が組継ぎ本様式の小冊子として発表され話題となっています。
この小冊子は大阪DTPの勉強部屋の宮地知さんが企画し、本文フォントにフォントワークスの筑紫書体で知られる藤田重治さん、組版にブログ「なんでやねんDTP」や雑誌で執筆される大石十三夫さん、朗読に女優の結城しおり(大倉壽子)さんらが参加し様々な展開が行われています。

■ソフトカバー
ソフトカバーA
本文に、別紙でジャケット(カバー)を被せてあります。
本文とは繋がっていません。

ソフトカバーB
本文の最後(もしくは最初)のページを長くして、
ぐるっと巻いてケースにしています。

ソフトカバーC
本文の最初と最後のページを長くして、
互いにかみ合うような形で組み合わせてケースにしています。
交差式製本という製本方式の表紙の部分を真似ています。

■ハードカバー
本文の最初と最後のページを見返しのきき紙として
表紙に糊付け使用しています。

日本語デザイン研究会では現在、組継ぎ本による展開を企画中です。このブログで発表していく予定ですのご期待ください。

12.12.2013

文字好きを増やすために

先日、12月1日に当研究会の第一回目の会合を開きました。まだ発足から日が浅く、PR活動もこれからということで、ごく少人数でまったりとお茶会。半数は「文字初心者」ということで、今回は「名古屋地区に文字仲間を増やすにはどうすればよいか」をいろいろと語りました。とにかく、この地域は東京や大阪とくらべて、そもそも「文字好き」が少ないので、マニアックな企画をやっても人は集まらない。そのために興味を持ってもらうための初心者や学生のためにワークショップや企画を実施することを目標に、活動をはじめることでメンバーの意見はまとまりました。

アイデアがどの程度実現するかわかりませんが、来年からいろいろと活動します。

10.24.2013

ウェブフォントを使おう

本ブログはウェブフォントサービス「フォントプラス」を利用して、ウェブフォントを使用しています。見出しは「筑紫B見出しミン」、本文が「筑紫オールド明朝R」です。
2年ほど前にいくつかの日本語ウェブフォントサービスがはじまり、文字好きの間でそれなりに話題になりましたが、2013年になった今でもそれほど普及していません。
日本語のウェブサイトが英語のサイトにくらべて醜悪であるという意見はそれなりにあり、その原因のひとつとして「ウェブで使えるフォントが少ない」というものがありました。それなのになぜ日本語ウェブフォントが普及していないのでしょうか。
原因を考えてみました。

・導入してもウィンドウズではきれいに表示されない
・縦組みが現実的でないので、導入する強い動機がない
・しっかりとした組版ができないので、導入しても
 きれいな文字組にはならない
・ブラウザの設定によってはうまく表示されない場合がある
・クライアントに理解してもらうのが難しい。ウィンドウズの場合
 メイリオよりも汚く表示されるため、場合によってはクレームになる
・本文のフォントを変えることに価値を感じていない
・ウェブフォントを「使いたい」と思わせる、かっこいい事例が少ない

技術的な問題については、確かに不十分さを感じます。しかし、紙媒体とウェブ両方を作っていて思うのは、とにかくウェブには妥協しなくてはならないことが多いということです。紙媒体の場合、予算さえかければ妥協点を減らすことはできるのですが、ウェブの場合、どうしても旧型のPCからタブレット・スマホなど、閲覧環境に依存してしまう以上、精度の高いデザインは諦めるしかなかったりします。
そのため、文字にこだわるウェブ制作者からすれば技術が不十分だし、文字よりも他の部分に重点を置くウェブ制作者からすれば、閲覧環境によって表示のされ方が変わってしまうウェブフォントなど、使ってられないということになるでしょう。

しかし、文字にこだわるのであれば、現時点での技術が不十分でも使う価値は十分にあると思います。案件にもよりますが。例えば、本ブログがMS明朝で表示されても内容と合っていないので、説得力は落ちると思います。やはり内容によって書体を変えるのは当然で、現時点ではユーザーはそこまで意識していなくても、いずれ無意識的に書体の違いを感じるようになります。そのために制作者はユーザーの一歩先を見据えて作るべきでしょう。

個人的には、合成フォントが使えるようになってほしいと思うのですが、現時点ではそれができるサービスはないようです。
あとはやはり縦組みは避けて通れないと思います。イワタオールド明朝や游築見出し明朝体などは縦組みでこそ真価を発揮します。

10.22.2013

モリパスとフォントワークスLETS

本ブログを読まれている方の大半は、フォントの年間ライセンスプログラムに加入していると思います。私はフォントワークスのLETSには加入しているのですが、モリサワパスポートには加入していません。理由は、デザインデータの作成がほとんど自社で完結していて、外注先とフォント環境を合わせる必要がない、というのが一番ですが、もう一つ大きな理由として「毎年5万円は高い」と思ってしまうことがあります。5万円あったら、その予算で欲しいフォントのパッケージ購入をしたほうがよいのでは、と思ったのです。
ただ、そう思ったのは大日本スクリーンや、タイプバンク、リョービの書体がモリサワパスポートに入る前の話で、今となっては「モリパスにも入っておけばよかったかも」と少しだけ思います。そこで、現在私が加入しているフォントワークスのLETSと、モリサワパスポートそれぞれに含まれる書体の「私が使いたい」書体をピックアップし、どちらが得なのか比べてみることにしました。

【使いたい書体】

 ◉モリサワパスポート(52,290円/年間)
秀英明朝(●)、秀英初号明朝 撰(●)、光朝、A1明朝、ゴシックMB101(●)、見出しゴMB31(●)、秀英角ゴシック 金(●)、秀英角ゴシック 銀(●)、秀英丸ゴシック(●)、解ミン宙解ミン月リュウミンオールドがな(●)、秀英3号(●)、秀英5号(●)、ヒラギノ明朝(●)、ヒラギノ角ゴ(●)、こぶりなゴシック、ヒラギノ角ゴ オールド、ヒラギノ丸ゴ、游築五号仮名(●)、游築36ポ仮名(●)、ヒラギノ角ゴ AD仮名、築地体初号仮名、築地体35ポイント仮名、築地体一号太仮名(●)、築地体三号細仮名、築地体三号太仮名、江川活版三号行書仮名、築地体前記五号仮名、築地文舎五号仮名、本明朝-Book(●)、本明朝-Book 小がな(●)、本明朝-Book 新がな(●)、本明朝 小がな(●)、本明朝 新がな(●)、本明朝 新小がな(●)、花胡蝶(●)、花蓮華(●)、花牡丹(●)、築地(本明朝用)(●)、小町(本明朝用)(●)、良寛(本明朝用)(●)、行成(本明朝用)(●)、弘道軒(本明朝用)(●)、築地(ナウゴシック用)(●)、小町(ナウゴシック用)(●)、良寛(ナウゴシック用)(●)、行成(ナウゴシック用)(●)、弘道軒(ナウゴシック用)(●)

 ◉フォントワークスLETS(25,200円/年間/3年コース)
筑紫ゴシック、筑紫明朝、筑紫Aオールド明朝、筑紫Bオールド明朝、筑紫A見出ミン、筑紫B見出ミン、筑紫A丸ゴシック、筑紫B丸ゴシック、グレコ、ライラ、スーラ

各社とも、他に使う書体はありますが、それらは「あれば使う」という程度のものなので、今回は「欲しい」書体に限定しました。それと、ファミリー展開している書体の各ウェイトを細かく数えるのもやめています。私にとって重要なのは「○○書体が使える」ということで、ウェイトが豊富なことは便利ではありますが、最優先ではないのです。ここは意見が分かれるところだと思います。

さて、こうしてみるとモリサワパスポートの方が高いとはいえ、「使いたい書体」が圧倒的に多いことがわかりました。ただし、(●)がついている書体はパッケージやダウンロードデータですでに所有しているので、私が今加入してもかなりダブってしまいます。それに、字游工房や、フォント解、朗文堂などのフォントは、別途購入しなくてはならないことには変わりません。

というわけで、すでに結論は出ていたのですが、しばらくの間は「LETSに入りつつ、欲しい書体をパッケージで買う」というスタイルを続けようと思います。いずれ、ページ物の仕事が増えたら、モリサワパスポートにも加入するでしょう。

※これは、データ作成をほぼ自社で完結する私の制作環境での話で、ふつうはモリサワパスポートの導入はほぼ必須といえるでしょう。余裕があればフォントワークス、イワタのLETSも導入するという感じでしょうか。



10.16.2013

日本語デザイン研究会|ブログ開設

日本語デザイン研究会|中部は、名古屋とその周辺地域でタイポグラフィについて学ぶ・議論するための「場」をつくるために結成されたサークルです。

名古屋地区で十数年、デザイナーをしていて感じるのは、本格的なタイポグラフィを実践しているデザイナーが名古屋には少なく、そのためか、それを学ぶためのセミナーやイベントなども皆無に近い状況であることです。これは、東京や大阪に比べ、出版社の数が圧倒的に少ないことが原因のひとつだと思われますが、だからといってこのままでよいはずがありません。この地域にも「文字に興味があるけど、文字について話せる人もいないし、教えてくれるセミナーもない」と感じている人がいることは確かなので、何かできないものかと考えていました。
とにかく「文字やタイポグラフィについて話ができる人で集まりたい」「文字仲間をつくりたい」 まずできることはこのための「場」をつくることが重要だと思いました。この考えに、文字関連の専門家達の間で顔が広い、デザイナーの的場仁利さん、写植研究家として文字マニアに知られている、写植ファンサイト「亮月製作所」の桂光亮月さんなどにも賛同していただき、研究会が発足しました。

活動内容はまだ手探りですが、

・中部地区のタイポグラフィの巨匠にお会いして、お話をうかがう
・文字仲間で、会合をひらく
・小規模な勉強会をひらく

という内容ではじめていきたいと思います。
どうぞ応援よろしくお願いいたします。

※入会をご希望の方は、本ブログのメールアドレス(nihongo.chubu@gmail.com)か、Facebookの「日本語デザイン研究会|中部」ページよりメッセージを送信してください。